製造業には、工業簿記、建設業には建設業簿記、林業簿記、農業簿記、漁業簿記(造る、育てる、捕る)があるように、主勘定に連なる補助科目毎に損益計算書を有する簿記と、販売業には商業簿記、金融機関には銀行簿記のように、主勘定に連なる補助科目毎の損益計算書を有せぬ簿記があるにも拘わらず、何故に建設業者は、製造業の工業簿記から主勘定を取り除く、いわゆる商的工業簿記で、建設財務を行うのか、その要因は、小零細建設業者に、業種外簿記の欠陥を認識する知的財産はなく、只単に税務署に寄与する行為になるだけです。
商的工業簿記とは、製造業の工業簿記から、主勘定の仕掛品、半製品、当期製品製造原価を取り除き簡素化を図った簿記であり、建設業簿記で例えれば、貸借対照表の棚卸し資産である未成工事支出金が、損益計算書の当期完工原価に混在するなど、期中損益を曖昧にし、その曖昧さを決算確定申告月に洗い替えと称し、完成工事高(売上高)を有せぬ工事原価を仕掛工事とし振り替える等、ただ単に納税を目的とする簿記の別名を、不完全工業簿記とも称します。
業種が異なれば簿記が異なり、簿記が異なれば原価が異なるのは、企業会計(経理)の必須条件であるにも拘わらず、小零細建設業者は基より、指導をする税理士も同様に、業種外簿記の欠陥を認識していないようです。現行の税法も同様に、収益と費用が申告基準でありますので、業種外簿記の選択には規制がありません。
「金次郎」の開発会社であり、建設業経営コンサルタントでもある弊社が、関東地方の小零細建設業約千社に、原価三表にかかわる実体調査を行ったところ、実行予算管理表、未成工事進捗表、工事台帳などはほとんど作成されず、材料費、外注費、仮設経費、共通仮設費、機械損料など、一部の現場経費をただ単に羅列しているだけで、建設業簿記には程遠いものでした。
小零細建設業者は、業種別簿記に対する認識のある顧問税理士がほとんどいないため、製造業の商的工業簿記で建設業の会計業務を行います。その結果、決算書の建設原価報告書は商的工業簿記同様に、非現実的な損益計算書が作成されます。受注しなければ経費が捻出せず、すれば赤字の補填が出来るという考えです。
問題の根源は、建設業経営者に、管理会計の考えが希薄なため、すべての責任を顧問税理士のせいにすることはできません。
では、実際にどのような状況にあるのでしょうか。
まず、完成工事高(売上高)についてですが、これが未計上でも当該現場経費を原価とし、(本来は、未成工事支出金=資産勘定)前受金・未成工事受入金(負債勘定)も、完成工事高(売上高)として計上しています。
決算期末に洗替と称し、未成工事支出金(仕掛工事)を資産勘定に、前受金・未成工事受入金(出来高)を負債勘定に振替えます。最終段階の詰めに入るこの時点で、顧問先に未成工事(仕掛工事)の選択権を委ねます。
幸いにも建設業者の請求書は工事名が記載されていますが、それに伴う直接現場経費の材料費・外注費等の仕訳伝票には工事名の記載がなく、請求書などから適当に抽出します。
その後、税務調査のとき、調査官に未成工事支出金に現業員賃金手当の記載漏れを発見され、作業報告書の提出を求められます。
税務調査官は提出された作業報告書より、当該工事件名に従事した従業員の時数を抽出、実働時数で除算した後に、人工計算で労務費を総括します。作業報告書がない場合は、法定労災計算資料に基づき契約金額の2割相当額を労務割合とみなし、進行基準額(出来高)で除算し修正申告に持ち込みます。
税務調査官は、未成工事支出金に記載されていない仮設経費・工具消耗品費・設計費・運搬費・租税公課・事務消耗品費・通信交通費・交際費・補償費・雑費なども決して見逃しません。
加えて、従業員賞与・法定福利費・福利厚生費・機械等経費・労務管理費・減価償却費・地代家賃・修繕維持費などの間接現場経費までが、修正申告の対照にされますと、これに対する税理士の知識は皆無に等しく、自社で確立するしか方法がありません。
ここで重要なことは、ただ単に税務調査対策ではなく、建設業簿記本来の会計業務を行うということです。
その結果として、当期完成工事高の間接現場経費より、当該未成工事支出金に間現場経費が移行され、必然的に
営業利益が増額します。
小零細建設業者ほど顧問税理士に会計業務を委託することが多く、合計残高試算表を一例に挙げれば、3ヶ月程度の遅れは珍しい事ではありません。仮に、次月に月次合計残高試算表(貸借対照表・損益計算書)が確定されても、仮定の損益計算書であり、信頼に値する帳票ではありません。
通常、税理士に委託する会計業務は、決算申告月までに損益が確定するのが大半であり、赤字決算ともなれば、官公庁指名業者は取り返しのつかない結果となり、粉飾決算を余儀なくされます。その結果、税務調査官の引継事項(ブラックリスト)に記載され、税務署の関心を引くことになります。万が一にも納税証明書に重加算税が記載されれば、官公庁の指名停止は免れません。
公共工事の場合
公共工事を一例に挙げれば、適正利益を確保すると受注ができず、連続3件のダンピング受注ともなれば、倒産廃業の憂き目を見ます。
こうならない手段はただひとつ、工事別損益計算書で自社の完工原価至近率を把握し、社員が一丸となり、合理化と省力化を推進し、毎年僅かでも原価率を引き下げる方法以外はありません。
多額の代表者貸付金
某区某設備会社の「金次郎」の導入時、データの登録時、決算書に、代表者貸付金が六千万円超もあるのに不審を抱き、顧問税理士に詳細説明を求めた結果、期末現金現実残の相違を全て代表者貸付金として処理していた旨を知らされ愕然としました。税理士いわく、客先にその旨を連絡しても、調べる術も知識もなく脱漏仕訳伝票の追従調査など、僅かな顧問料で出来る訳もなく、追徴課税など全ての要因は客先にあるとの回答でした。
銀行の視点
某銀行某支店の税理士は、税理士推薦ローンを申請する顧客の過去3年分の決算書を解析する際、一覧式工事別損益計算書などの勘定科目別計が、決算報告書の建設原価勘定科目別計に合致する資料が無く、財務諸表の工事原価が四要素の総体的な損益計算では、融資する根拠がなく、某現場の赤字の要因は、某役所の設計ミスにもかかわらず、追加工事金で担当者の責任問題にまで発展したが、結果的に今後の指名入札を鑑み、断念せざるを得なかったなど、詳細説明の如何により融資可能な例があるにもかかわらず、全てがドンブリ的な決算書では融資の対象にはならないとのことです。
建設業経営の管理会計ポイントは、原価管理にあります。正確な原価管理を実現するには、経営者の意識改革の必要と、優れた会計システムの採用にあります。
原価管理一元化システムと言われる「金次郎」が、他社製の会計ソフトと大きく異なるのは、五大管理システムの一元化や完成工事原価のシュミレーション機能だけでなく、過去20数余年に亘って積み上げた、膨大な建設業の管理会計データと、経営管理のノウハウをコンサルタントとして、皆様に提供していることです。
建設業管理会計システムの「金次郎」と、管理会計業務のノウハウの提供が一体で行われるところに、パッケージとして「金次郎」の際立った特徴があります。