平成16年4月28日
公正取引委員会
最近、国や都道府県が発注する公共建設工事に係わる入札において、入札参加業者が、発注者の定める予定価格を大きく下回る価格で応札する、いわゆるダンピング受注の問題が全国的に生じていると指摘されています。公共建設工事において、採算を度外視した極端な安値受注が繰り返され、他の事業者が受注の機会を得られないなどにより、競争事業者の事業活動を困難にさせるおそれがある場合には独占禁止法で禁止する不当廉売として問題になることから、公正取引委員会は、平成15年11月以降、国土交通省および各都道府県に対し、低入札価格調査制度に基づく調査の対象となった公共建設工事などについて情報提供を依頼しています。
現在までのところ、国土交通省及び各都道府県からは、約700件の公共建設工事などについて情報の提供があり、公正取引委員会は、そのうち、比較的早い時期に提供を受けた情報に基づき、発注者から複数回にわたって、低入札価格調査制度に基づく調査を受けた事業者などのうち、長野県所在の3社及び青森県所在の2社の合計5社を対象として、事情聴取を行うなど、調査を行ってきました。
1. 公共建設工事における不当廉売への対応
(1)独占禁止法が禁止する不当廉売について「正当な理由がないのに商品または役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給し、その他不当に商品又は役務を低い対価で供給すること」(価格要件)により、「他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれ」(影響用件)がある場合に、独占禁止法で禁止する不当廉売に該当する。(不公正な取引方法第6項)
(2)公共建設工事における不当廉売の考え方
公共建設工事の特性に照らし、その不当廉売の考え方を示すと、以下のとおりである。
ア 公共建設工事における費用構成
国土交通省が公表している「土木請負工事費積算要領」は、公共土木工事費の積算体系について、別紙のとおり定めている。これによれば、
工事原価=直接工事費+共通仮設費+現場管理費
公示価格=工事原価+一般管理費等
となっている。
イ 公共建設工事の特性を踏まえた考え方
(ア)前記(1)の価格要件のうち、「供給に要する費用」とは、通常、総販売原価と考えられており、公共建設工事においては、「工事原価+一般管理費」がこれに相当するものと考えられる。また、「供給に要する費用を著しく下回る対価」かどうかについては、公共建設工事においては、「工事原価(直接工事費+共通仮設費+現場管理費)」を下回る価格であるかどうかが、ひとつの基準となる。
(イ)前記(1)の影響要件については、安値応札を行っている事業者の市場における地位、安値応札の頻度、安値の程度、波及性、安値応札によって影響を受ける事業者の規模等を個別に考慮し、判断することとなる。
2 調査結果
前記のとおり、5社について調査を行った結果、長野県が発注する建設工事において、供給に要する費用を著しく下回る価格で繰り返して受注していた株式会社守谷商会(以下「守谷商会」という。)に対し、本日独占禁止法19条(不公正な取引方法第6項[不当廉売]に該当)の規定に違反するおそれがあるものとして、次のとおり警告を行った。
(1)守谷商会に対する警告
ア 関係人の概要
名称 株式会社守谷商会
本店所在地 長野市千歳町878番地
代表者 代表取締役 斉藤嘉徳
事業内容 一般土木建築工事業
イ 違反被疑行為の概要
守谷商会は、長野県において有力な建設業者であるところ、同県が平成15年度において発注した建設工事について、38件を受注(予定価格に対する落札価格の比率は平均約65%、予定価格1億円以上の建設工事6件、同5,000万円以上1億円未満の建設工事9件、同1,000万円以上5,000万円未満の建設工事19件、同1,000万円未満の建設工事4件)しており、そのうち、約6割の建設工事について、一般管理費及び利益を計上することなく入札価格の積算を行い、また、同社が受注後、実行予算(別紙の2参照)を作成した建設工事約30件のうち、約3割の建設工事において落札価格が工事原価を下回り、さらに、建設工事が完了した15件の決算(13件の決算見込みを含む。)においても、その約5割で最終契約価格が工事原価を下回っていた。
ウ 前記イによれば、守谷商会は、長野県発注の建設工事について、供給に要する費用を著しく下回る価格で繰り返して受注し、長野県発注の建設工事における競争事業者の事業活動を困難にさせるおそれを生じさせた疑いがあるものであると認められたことから、今後前記イのような行為を行わないよう警告した。
(2)なお、本調査を行った他の4社が平成15年度に受注した長野県又は青森県発注の建設工事について、その実行予算の内容を調査したところ、下記のとおり落札価格が工事原価を下回っている状況は認められなかった。
(4社の受注した工事50件の状況)

(注1)「落札率」とは、予定価格に占める落札価格の割合である。
(注2)「一般管理費」とは、落札価格から工事原価を差し引いたもので、国土交通省の土木請負工事費積算概要における「一般管理費等」に相当するものである。
注3)「一般管理費等の率」とは、落札価格に占める「一般管理費等」の割合である。
3 今後の取り組み
今後、今回の調査対象外の事業者について、当該事業者が受注した公共建設工事の損益状況について調査を行い、前記 1(2)の考え方を踏まえて、独占禁止法で禁止する不当廉売として問題のある行為が認められた場合には、必要な措置を探ることとする。
なお、平成13年3月9日閣議決定の「公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する方針」では、「いわゆるダンピング受注は、建設業の健全な発達を阻害するとともに、特に、工事の手抜き、下請けへのしわ寄せ、労働条件の悪化、安全対策の不徹底等につながりやすいことから、各省各庁の長等においては、現行の低入札価格調査制度及び最低制限価格制度を適切に活用し、ダンピング受注の排除を図るものとする。」とされているところであり、いわゆるダンピング受注の問題については、上記のような公正取引委員会の取組に加えてこのような措置が進められていることが望まれる。
国土交通省の積算体系及び実行予算
1 国土交通省の積算体系
一般的に、国土交通省及び多くの都道府県は、国土交通省が公表している「土木請負工事費積算要領」の積算体系(下表)に従って予定価格を積算している。また、入札参加者も、基本的には、この積算方法に従って、入札価格を積算している。これによれば、工事価格=工事原価+一般管理費等であり、工事原価=直接工事費+共通仮設費+現場管理費となっており、一般管理費などは会社の本支店での必要経費などと利益の合計額となっている。
(1). 直接工事費:工事目的の施工に直接必要な経費
(例)材料費、労務費等
(2). 共通仮設費:施工に共通的に必要な経費
(例)機械等の運搬費、現場事務所等の営繕費、工事現場の安全対策に要する安全費等
(3). 現場管理費:工事を管理するために必要な費用
(例)現場に常駐する社員の給与、労務者の交通費、安全訓練費、
労災保険等の法定福利費等
(4). 一般管理費等:会社の本支店での必要経費、試験研究費、公共事業としての適正利益
2 実行予算
事業者は、発注者との間で契約締結後、契約価格(落札価格)をもとに、改めてそれぞれの経費について詳細な見積もりを作成する。これは、通常実行予算と呼ばれており、実際に工事を施工するに当たっては、この実行予算に従うこととなる。
実行予算における費用項目は、必ずしも上記積算体系には従ってはいない。
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公正取引委員会事務総局審査局管理企画課情報管理室
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